制約

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 心はきっと、読まれている。 「天に戻れることはないのでしょうか」 わかりきった質問だった。それでも、聞かずにはいられない。 『悪魔として生きよ』 逢いたい人がいる。悪魔では叶わない望み。 『ほう、まだ愛していると申すか』 驚き、顔を上げた。広すぎる謁見の間、遠く正面の玉座に冥王ハデスはいる。傍らに佇む妃の姿。 「無礼な、顔を下げよ」 側近の者の叱咤に顔を下げた。  なんて存在感。なんて威圧感。ただ玉座に居るだけで、周りの空気が震えそうな程に張り詰めている。あれが、冥界の神なのか。 『ラビエル、お前は悪魔だ。人の子に愛されると思うか』 天使の姿で出逢い、愛されたことさえ奇跡だった。  黒い翼、俺は悪魔だ。絶望に揺らぐ。 「愛して……… いたのです」 一瞬の沈黙を破り、透き通る女性の声が響く。 『ならば、人間界に参ればよい』 「ペルセポネ様、それは成りません」 側近達がざわつく。今の声は、冥府の女王ペルセポネなのか。 『ラビエル、その姿でも逢いたいか』 ペルセポネの凛とした声が続く。 「叶うなら、一目だけでも」 何百年の時を過ごした間、たった一度だけ、愛した人。 『しかし、ペルセポネ。掟は掟じゃ』     
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