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時計台の下に、それはある。見上げるほど縦に大きな扉。
「俺は本来、霊魂の案内人なんだ。ここから連れて行くことはあるが、ここに連れて来るのは、滅多にないんだぜ」
「滅多に、って。稀にならあるんだ?」
カロンは地面に降り立ち、翼を下ろした。
「まあな。たまには例外もあるさ」
スタスタ扉の前に行き、来いよとばかりに手招きをする。
「ここに両手を合わせて。行きたい時間を願え。人間界へ繋がるから」
「わかった、ありがとうカロン」
言われた通りに扉に両手を合わせた。
逢いたい人のいる人間界へ―― 強く願った。
音も無く、左右に扉は開いた。漂う暗闇が現れる。
「行けよ」
カロンに押され、扉の中へと足を踏み入れた。
暗闇が身体にまとわりつくように、揺れ動く。
強い力に身体が引っ張られる。吸い込まれるように。時空を超えている、その感覚なのか。
翼を大きく広げた。行こう、人間界へ。
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