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長い髪を揺らして、彼女は笑った。
「あ、俺は………」
ラビエル。迷った、悪魔に生まれ変わり、銀色だった髪は黒くなり、青い瞳も消えていた。そんな名前を信じるだろうか?
部屋に置かれた本のタイトルが咄嗟に目に入る。
[亜依の物語]アイか。それだ。
「るい、流依だ」
一文字だけ、ラビエルから合わせてみる。人間の文字は読めた。遥か昔に愛した人が教えてくれていた。
「流依? そう」
微笑みは寂しそうに見えた。気のせいか?
「私は、結月」
「ほんとに悪かった。もう行くよ」
立ち上がろうとした。ガクンッ、膝が折れる。
「もう少し、休んでいて? 大丈夫よ、私一人だから」
返事も聞かず、結月は部屋の向こうへ行ってしまった。ゆっくり立ち上がり、結月の行った方を覗く。どうやら料理の最中の様だ。
「座っていて? ご飯作るから」
俺に気がついて、結月はまた笑った。
キッチンから続くリビング。明るい色のカーテンに、白が基調の家具。どれも小さい。一人暮らし、の一人か。
ソファになだれ込む。さすがに空から放り出されれば、身体も痛むものらしい。
「――翼は?」
はっと思い出した。そうだ、空から落ちること自体、おかしい。
「ラビエルの名の元に」
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