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対峙
翌日、俺は翼をしまい、結月と病院へ向かった。
遮断されたガラス窓の向こうに、純也はいた。不安なのか、結月はずっと俺の右袖を掴んで放さない。
何かが見え隠れした。純也の頭の周りを影が行き交う。
「バッサーゴ!」
なんであいつが!?
「流依、どうしたの?」
「呼ぶまでここから離れるんだ、早く」
何度も心配そうに振り返りながら、結月はその場を離れた。
面会謝絶のドアを抜け、遮断された扉の向こうへ。純也は複数の機器に管で繋がれ、横たわっている。
右手を上に掲げた。術文を唱える。現れる翼。
「ギャッ」
バッサーゴが驚いて悲鳴を上げた。
「逃げるな。バッサーゴ」
ひょいひょいっと、跳び跳ねる様に歩く。それがこの悪魔のクセだ。
「これはこれは、ラビエル様。妙なところにおいでで」
「お前こそ、何をしている?」
高位天使の職にあった時、悪さばかりするバッサーゴを捕まえ、何度か処分を下していた。まさかまた、何かを企んでいるのか。
「い、いやあ。わしゃ、あの」
「はっきり言え」
「いや、そ、それはラビエル様でも言えませ………」
右手をバッサーゴに向けた。
「rai!」
小さな雷が、バッサーゴの頭上に落ちる。
「ギャッ、ギャッ」
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