対峙

1/11
79人が本棚に入れています
本棚に追加
/154ページ

対峙

 翌日、俺は翼をしまい、結月と病院へ向かった。  遮断されたガラス窓の向こうに、純也はいた。不安なのか、結月はずっと俺の右袖を掴んで放さない。  何かが見え隠れした。純也の頭の周りを影が行き交う。 「バッサーゴ!」 なんであいつが!?  「流依、どうしたの?」 「呼ぶまでここから離れるんだ、早く」 何度も心配そうに振り返りながら、結月はその場を離れた。  面会謝絶のドアを抜け、遮断された扉の向こうへ。純也は複数の機器に管で繋がれ、横たわっている。  右手を上に掲げた。術文を唱える。現れる翼。 「ギャッ」 バッサーゴが驚いて悲鳴を上げた。 「逃げるな。バッサーゴ」 ひょいひょいっと、跳び跳ねる様に歩く。それがこの悪魔のクセだ。 「これはこれは、ラビエル様。妙なところにおいでで」 「お前こそ、何をしている?」  高位天使の職にあった時、悪さばかりするバッサーゴを捕まえ、何度か処分を下していた。まさかまた、何かを企んでいるのか。 「い、いやあ。わしゃ、あの」 「はっきり言え」 「いや、そ、それはラビエル様でも言えませ………」 右手をバッサーゴに向けた。 「rai!」 小さな雷が、バッサーゴの頭上に落ちる。 「ギャッ、ギャッ」     
/154ページ

最初のコメントを投稿しよう!