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「他の物では、だめでしょうか。」
「めっそうもない。それでは龍王様をだましたことになります。だめです。」
お坊さんの静かな怒りを感じましたが、村長はひらきなおりました。
「お寺の鐘がおしいのではございません。
この水不足で村人は体が弱っています。たいそう重い鐘を運ぶのは無理です。私は、
村人の体を心配して言ったのです。」
「おらたちも、運びたいんだけど、力が出ねえだ。」「そうだ、そうだ。」「腹ペコだべ。」
「無理なものは、無理じゃ。」「残念だべ。」
「バア~ン」
騒ぎたてる村人を前に、お坊さんは床に錫(しゃく)杖(じょう)を突き立てました。
「鐘をささげることは反対ではないのですね。よろしい。拙僧(せっそう)が、一人で
運びます。」
『シ~ン』
お坊さんの迫力に村長たち村人は静まりかえりました。
でも、心の中ではお坊さんを馬鹿にしていました。
『一人で運ぶだと。絶対に、無理。』
『頭おかしいんじゃねえか。』
『そげなこと言って、手伝わそうたって無駄だべ。』
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