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御前試合も無事終わり、移香斎は鶴姫と京の都の散策を楽しんでいた。
一緒に行くと駄々をこねるローズは、大黒屋に押し付けてきた。
「それにしても、北畠家の皆様の試合結果を聞いた時のエンドウ豆と思って、
カメムシを喰ってしまったような表情、大層面白かったですわ。」
鶴姫は、上機嫌であった。
愛する移香斎の勝利を信じてはいたが、やはり、そこは女、心配していたのである。
京の都の散策を満喫して屋敷に帰ると、顏まで甘い鞭の傷跡が残る大黒屋が
待ち構えていた。
「 移香斎様、先程から、天皇家より使者がお待ちしております。」
不思議がる移香斎に、使者は世にも摩訶不思議な話を聞かせるのであった。
「 そちが、愛洲移香斎か。高名は天皇家まで聞こえておるぞよ。
そちの腕を見込んで、頼みがある。
後花園天皇様のお館に夜な夜な現れる物の怪を退治してたもれ。」
「 物の怪でござるか。」
新しい玩具を与えられた子どものような目をした移香斎に、使者の説明は続くのであった。
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