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そんなことは知らない私だが、この護符を私の体に張られたら、ヤバいのはわかる。安倍さん、グッタリとした私の体を左手で地面から抱き起し、右手で私の額に護符を張りつけようとしたその瞬間、私の一重瞼でちょっと釣り目で切れ長の美しい両の瞳がクワッと開き、左手が安倍さんの右手を遮るとともに、右手の手刀で水月を背中に抜けてグサッと突き刺した。
「ぐえっ。何故・・・」
理科の授業で習ったでしょ。アースで地面に落雷の電撃を誘導して
やったのよ。それでも、ダメージは残る。私は、安倍さんともう少し
遊びたかったんだけど、もう余裕がない。
この安倍さん、よく見るとロマンスグレーのイケてるオジサンで、
若い頃はきっと女の子にモテたと思うんだけど、仕方ない。おさらばよ。
私は、ズボッと右肘まで右手を突き刺した。
「このままで済むと思うな。私には見える。六人の若者が、おまえを
滅殺するのを。楽しみじゃ。」
安倍さん、クソ憎たらしい台詞を残し、あの世に行っちゃった。
人を殺すのは初めてじゃないけど、何か嫌なものだ。
「あれれ・・・・。」
立ち上がった途端、頭がクラクラして、眩暈がする。視点も定まらないし、心臓が苦しい。吐き気もするし、膝に力が入らない。
「ねえ、どうして。」
玉藻に呼び掛けても、答えてくれない。
私は知らなかった。あの全身を貫く電撃は単に物理的な攻撃ではなく、
霊的な攻撃、破邪顕正の気が込められていことを。
私が今にも倒れそうになった時、私を抱きかかえてくれた人物が
いた。誰だかわからないが、女の人だってことはわかる。
「まあ、いいかっ。」
私は、その女の人が歌う優しい子守歌を聞きながら、安らかな眠りに
ついた。
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