デートは武道館で(転の章の始まり)

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 準決勝は、一木山(いちきやま)高校対帝国館高校。  今まで地区予選一回戦負けの高校が、準決勝まで勝ち進んだのだ。  大会5連覇を狙う相手に快挙と言えばそうだが、会場の観客は騒然となった。大相撲なら多くの座布団が舞っているだろう。  柔道は、簡単に言えば、崩し、つくり、かけの三つの手順で投げ技を かけるのだが、一木山高校の柔道部員は、体のどこでも掴んだ瞬間、投げる。相手が警戒して、腰を深く落としても、畑から大根を一気に引き抜くように投げる。僕たちのやっている大東流合気柔術の合気ではなく、単に力任せの投げ技だ。しかも、片手で体重100kgを超える相手を投げ飛ばす。  とても、人間業とは思えない。それに、全員の表情が不気味で、体が纏う気がどす黒く見える。これは、絶対に怪しい。 「近藤先生、お疲様です。」 「いよいよ、決勝ですね。ところで、気を付けてください。あいつら、 絶対に怪しいですよ。」  僕たちは、柔道部の顧問の近藤先生に応援がてら、忠告にしに言った。 「おう、おまえたち。応援に来てくれたのか。ありがとうな。おまえたちも、そう思うか。しかし、安心しろ。こんな時のためにも、おまえの御祖父さんに指導してもらっている。それに負けたら、大変だ。御祖父さんに殺されるかも。」 「確かに。」「そうかもしれませんわ。」  柔道部員もそこらへん十分わかってるし、何と言っても男子生徒の人気が高い、星のビーナス、神の舞を踊る森 星明きららが応援してくれると あって、俄然、気合が入る。 「まあ、大丈夫かな。」「様子を見ましょう。」  僕たちは仲良く並んで、決勝を見ることにした。
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