デートは武道館で(転の章の始まり)

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「キラちゃんは、ここにいて。」「うん、わかった。」  僕は、会場への階段を駆け下り、ガチガチ震える柔道部員に襲い掛かろうとしている鬼の延髄に飛び蹴りを放った。  一度、やってみたかったんだよね。日曜日の朝の特撮の変身ヒーロー番組を見て憧れた世代だから。  しかし、その鬼は、蚊に刺されたかのようにポリポリと延髄をかくだけだった。 「嘘だろう。マジかよ。」  その鬼が、僕に襲い掛かって来たが、僕に手を触れることなく、 大きく宙を舞う。柔道なら、完全な一本勝ちだろうが、相手は鬼。僕は全身の体重を乗せ、容赦なく踵で喉元に蹴りを入れる。  グエッ~  それでも、その鬼は立ち上がってきた。嘘だろう~。  しかも、辺りを見渡すと、国善高校柔道部は全滅。無事に立っているのは、僕一人。  五匹の鬼が、不気味に笑いながら、僕を取り囲む。  人間相手なら、十人でも怖くない。怪我をさせずに、無力化する自信はある。大東流合気柔術の達人、現代に生きる武神と称されている祖父に毎日稽古をつけてもらっているからね。  しかし、相手は不死身の鬼だ。まあ、鬼が相手でも、僕は攻撃を躱し続けることもできるが、早くみんなを病院に連れて行かないとヤバいかも。 「ねえ、キラちゃん、どうしたらいいと思う。」 「ごめん、私もわからない。」  僕は、二階の観客席で心配しながら、心配してるような、ワクワクドキドキしているようなキラちゃんに助けを求めたが、無駄だった。  どうしよう、僕、退魔師じゃないから。
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