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「發剄。太極拳か。」
僕のつぶやきにニヤリと笑いながら、陳桃陽はポケットから何やら難しい漢字を書き並べたお札を取り出し、鬼の額に張った。不思議なことに鬼は動きを止めた。それだけではない。見る見るうちに、元の人間体へと姿が戻った。表情も気も普通の人間の穏やかなものだ。
「エッヘン、その実態は・・・・」
仲間がやられたのを見て、容易ならぬ敵と見たのか、三匹の鬼が一斉に襲い掛かる。
「おまえら、せっかちだな。そんなんだから、女にもてないんだ。」
正面の鬼の攻撃を躱しつつ、背中に發剄が効いた掌打をぶちかまし、その場で助走もつけず、大きく両足を広げ、左右から襲いかかる鬼たちの顎を蹴り上げる。それでも、倒れない左右の鬼の水月に發剄の効いた掌打を左右同時にお見舞いする。
「すげえ~、功夫を極めてる。」
「いいか、残りのおまえ、待ってろ。絶対に襲ってくるな。最後まで言わせろよ。」
僕の絶賛に喜びを隠し切れない様子で、陳 桃陽は、床に倒れた三匹の鬼の額に同様にお札を張り付ける。
同じように、元の人間体へと姿が戻った。
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