デートは武道館で(転の章の始まり)

12/44
前へ
/93ページ
次へ
 僕たちが酷い目にあっている時、僕の祖父とキラちゃんの祖母は、僕が睨んだ通りデートだった。  デートの場所は、都立体育館、関東大会女子バスケットボールの決勝会場である。  祖父と同じく大東流合気柔術の達人である奏絵さんは、ひょんなことから女子バスケットボール部の特別コーチを頼まれ、指導している。  大東流合気柔術とバスケットボールは、一体どんな関係があるのか不思議に思って聞いてみたことがあるんだけど、祖父が語るには、古武術バスケットと言って古武術を取り入れた高校が実際に存在し、確実に力をつけ、今では強豪校として名を連ねているとのこと。  奏絵さんが特別コーチとして指導している女子バスケットボールも然りじゃと。自分のことのように自慢するのが、聞いていて面白かった。  さて、奏絵さんが応援する朱雀高校と対戦するのは、準決勝で昨年度の優勝校の美雲学園高校を102対51とダブルスコアーで打ち破った二木川高校であった。  地区大会一回戦負けの弱小チーム。  それが、突然生まれ変わったように強くなったらしい。  まず、フルタイム、スタメンが出ずっぱり。驚異のスタミナだ。  平均身長は、170cmと普通だが、ジャンプ力はけた違いで、全員が 女子ながらにダンクシュートができる。しかも、反応スピードがハンパなく、コートの端から端まで余裕でパスができるくらい肩の力も異常だと。 「怪しいですわ。」 「確かに。」  決勝前のアップを見ていた奏絵さんと祖父が気が付いた。 「人間業ではないようじゃ。」 「物の怪が憑いているようですね。」  亀の甲より年の劫。  僕たちと違って、この二人は即座に気が付いたようだ。
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加