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奏絵さんは、いつも持ち歩いている龍笛を吹き始めた。
龍神祝詞をイメージした曲だ。途端に、五匹の女鬼の動きが鈍くなる。
耳を抑えて、苦しみだした。勝機とばかりに、祖父は龍神祝詞を唱えながら、気をため、念を込めて額を打つ。
「破邪」
祖父は、四匹の女鬼を次々と倒した。
見る見るうちに、四人の普通の可愛い女子高生に戻る。
「あのお方とは、誰じゃ。」
祖父は、残った安達の鬼に叫んだ。
「ソレハ イエナイ。イエバ コロサレル。」
「なら、仕方ない。」
「破邪」
祖父は同じように、龍神祝詞を唱えながら、気をため、念を込めて額を打つが、あまり効果がない。
「そうか、ならばこれじゃ。」
祖父は見たこともない奇妙な舞を始めた。心得ある者が見れば、成る程
然りと頷くであろう。普通の者には見えないが、祖父の全身から青白い
清々しい気が立ち上る。
「破邪。怨霊退散」
祖父は、両手で安達の頭を挟み込むように打った。
ゲエエ~
安達は悶え苦しみながら、口から何かを吐き出すではないか。
見たこともない気味の悪い大きな寄生虫・・・・・。
やっと、安達は元の人間体へと変化する。
祖父は、その寄生虫を踏み砕く。普通、食べないよね。
「終わったようですね。ところで、今の舞は。」
「60歳の還暦の同窓会で朋輩に教えてもらった魔物封じの舞よ。高校の校長をやっていたが、退職して実家の神社の宮司をやっておる変わり者じゃ。ワシの大東流合気柔術に陰陽道を融合させたら面白いと、無理やり覚えさせられたものじゃ。あの時は必要ないと思ったが、あやつ、この日が来るのを予知していたのかもしれぬな。ほんに、助かった。やはり、持つべきものは、友じゃのう。」
「まあ、それは良いお話をお聞きしました。魔物封じの舞ですか。心強いこと。これなら、次も安心ですね。」
「次ねえ・・・・。ありそうじゃな。」
武神の領域に近づいている二人は、人間でありながら、神通力も持ち始めていた。二人の予知能力は、確かなものであることを、僕たちは後から思い知ることとなる。
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