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「あのう、うちの祖父が是非連れてくるようにとのことですが、どうでしょうか。」
「只の助べえジジイではなさそうね。鬼を退治するなんて、只者ではないな。いいよ、行ってあげる。お茶くらい、出しなさいよ。」
「ありがとうございます。はい、美味しい和菓子も用意します。」
祖父を怒らすと怖いが、陳 桃陽に対する僕の低姿勢が気にいらない
キラちゃんはプイと拗ねる。こっちも、怖いよ。
小一時間ほどで、僕の家の広間に全員集合した。
僕こと、近藤 奏夢。恋人のキラちゃんこと、森 星明きらら。
僕の祖父の近藤 義明、キラちゃんの祖母にして、祖父が昔結婚を誓い
合った元カノの森 奏絵さん。
そして、退魔師の陳 桃陽。錚々たるメンバーだ。
僕は、いそいそとお茶と和菓子の用意をした。和菓子は、祖父のお気に入りの銀座の名店で、祖父自ら並んで買ったもの。要予約で発送&配達なし、カード利用不可。営業時間は17時までで日曜祝日はお休み。それでも売れるほどの人気っぷりで一度食べたら忘れられない味の最中もなかの詰め合わせ。
かの有名な小説「吾輩は猫である」にも登場した名和菓子だよ。
こんな時に目上の者に気を遣うことなんかしないし、私はお客よ、わざわざ来てやってるんだからと、陳 桃陽は、真っ先に最中に手を出した。 それも、祖父が一番お気に入りの最中だ。祖父の顔が醜く歪む。
食い物の恨みは恐ろしい。僕、知らないよ。
「超美味しい。こんなの、香港でもないよ。世界一かも。もしかして、これかな。昔、私の祖母が日本で食べてめっちゃ感動した和菓子は。子供の頃から、よく聞かされたよ。」
「そうか、そうか、世界一か。そんなに美味しいか。」
機嫌がいっぺんに良くなり、眼尻が下がった祖父は、自ら墓穴を掘ることとなる。
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