デートは武道館で(転の章の始まり)

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「ふう、疲れたわい。」「本当に、疲れましたわ。」  祖父と奏絵さんが、無事、僕んちの道場に戻って来た。 「お疲れ様でした。」  僕は、二人にタオルと冷えた麦茶を差し出す。 「何、チンタラやってんだよ。トドメさせたやろ。」  僕たちは、祖父と奏絵さんの被っている頭巾、鎖が入っている合戦用の 頭巾に盗聴もできる隠しカメラを着けさせ、道場に設置したモニターで、 リアルタイムで観戦していたのである。 「お前の眼は節穴か。あやつは、本気を出していない。ワシら相手に余裕で遊んでいたのが、わからんのか。」  まだまだ未熟の龍美に、祖父は教え諭した。陳 桃陽も大きく頷いた。 「確かに、恐ろしい敵でした。まだ、手が震える。」 「どれ、どれ。もう、大丈夫じゃよ。」  祖父と奏絵さんは、僕たちの前で手を握り合うではないか。もう、勝手にしてくれって感じだよ。キラちゃんは、眼がウルウルしてるけどさ。  その時であった。  突然、真っ暗なモニターの画面が揺れたかと思うと、ヌウ~と何者かの顔がろくろ首のように伸びて飛び出した。
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