デートは武道館で(転の章の始まり)

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 清廉 珠美は、ウインクとともにオホホホと高い笑い声を残して、去って行った。 「無理、無理、無理、絶対に無理。私、降りるからね。」  あれほど、タイマンするやら、拉致するやらと強き発言をしていた龍美が、異常なほどに震えている。普通の女の子みたいだ。  確かに、僕も怖いけど、キラちゃんの手前、じっとやせ我慢。  武と三四郎君も黙ってるけど、額に冷汗が流れている。 「降りるってことは、一人で殺されるってことだよ。それでいいんだね。  僕、寂しいなあ。悲しいなあ。君の葬式で泣いちゃうかも。」 「自分も。」「僕もだ。」「私も。」「ワシも。」「私もですわ。」 「私もかな。」  武の太陽と北風作戦に、すかさずみんな乗る。チームワークばっちりと 言うべきか、底意地が悪いって言うべきか、どっちなんだろうね。 「仕方ない、そこまで言われたら、やってやろうじゃないか。みんな、 気合入れて闘うんだぞ。根性、見せろや。」  龍美は、立ち上がり、拳を高く突き上げ、吠える。そこら辺のヤンキーと不良が恐れ、泣く子も黙るホワイトデビルのリーダー復活だ。 「それでは、みなさん、最後の仕上げと参りましょうか。」  自称、香港一の退魔師の陳 桃明の特訓が再会された。付け焼刃は却って身の危険を及ぼす。祖父と奏絵さんの闘いを見た通り、それぞれが習得している武術、武道を基礎にするのが最も有効であるというが、それはそれは、もう厳しいもので、普通の若者ならまず逃げ出すどころじゃない、逃げる前に死んでいるよ。祖父と奏絵さんは、若い頃の荒稽古を懐かしんで楽しんでいるから、嫌になるね。龍美と三四郎君は柔道の乱捕りを基礎に当身技も盛り込み、真剣に取り組んでいる。  僕とキラちゃんは大東流合気柔術を基礎に取り組む。  武は一人で居合の型を繰り返していた。
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