第3章 オーロラの下でやっちゃいました

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 翌朝、フロントからの内線で起こされた。  時間が午前10時を回っている。慌てて起きて、服を着て荷物を纏めた。  夏鈴が歩くのが辛そうで可愛いから、そこらへんのソリを借りてきて乗っけて引っ張った。 小さな子供に戻ったような気分になる。  ブランチを食べてから、次の目的地のロヴァニエミに行くバスの時刻をチェックする。雪は止んで、雪かきも終わって、道は綺麗に整備されていた。  肩を貸してやるとやっと歩ける夏鈴。どんな具合か聞くと、「骨盤がおかしい」って…。  壊れるぐらい抱いてしまったようだ。ごめんな…。  ロヴァニエミまではサーリセルカから約300キロ南に下る。長距離バスで一気に南下するのだ。  バスの中で殆ど寝ていた俺達。到着してから気付いたが、あの夫婦がすぐ後ろに乗っていて、連中も寝惚けた顔をしていた。女の方が厚化粧をやめていたせいで、すぐには気付かなかった。  大荷物を下すときに、向こうから挨拶をしてきた。 「ごきげんよう」と言ってきた相手は俺じゃなくて夏鈴に、だった。 「こんにちは。すごく良い顔してますね…。楽しんでます?」 「ええ…。とっても楽しいわ。この前は、迷惑かけてごめんなさい」 「こちらこそ、いきなり変なこと言って驚いたでしょ?」 「驚いたけど、おかげで目が覚めたっていうか……ありがとう」 「私は何もしてませんよ?」  女2人で不思議な会話が続いていた。旦那同士で目が合うと、取り合えず頷き合っておいた。嫁の機嫌が良くなったらしくて、おっさんの表情も明るい気がする。
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