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急に、川上の顔が目の前に現れた。あまりに不意打ちで、心臓が脈打った。
「びっくりさせんなよ」
「東村って呼んでも反応しないからー何聞いてんの? そんなにいい曲?」
「別に」
川上の知見を広げるようなことをしたくない俺は、いつにも増してそっけない態度をとってしまったけど、川上はちっとも気にしていなかった。むしろいつもより機嫌良さげだ。なんだろ。部活でいいことあったとか?
川上が機嫌のいい理由は、すぐに判明した。
歩き出してすぐに、川上が自分で言ってきたからだ。
「東村、僕、彼女できた!」
「は?」
俺の動揺にも気づかず、川上は嬉しそうに俺に彼女ができた経緯を話した。だけど何を話していたかほとんど頭に入らなかった。ざっくり把握した分には、まあまあかわいい子に唐突に告白されたらしい。
川上は、女の好みもベタなやつで、いつもすごく人気のかわいい子に片思いしてしまう。そんでもって、気づいたらそのかわいい子は川上以上のイケメンと付き合いだして、川上は自然と失恋。少なくとも俺が川上と知り合った高一のころから今までのあいつの恋愛パターンはそうだったのだ。そしてもうしばらくそのパターンが続くと高をくくっていた。やばい、なんの心の準備もしていなかった。
川上みたいなやつにいつまでも彼女ができないなんて、そんなことあるわけないのに。
「それで、東村、悪いんだけど……」
「なに」
「明日から、彼女と下校しようと思うんだ。だから……」
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