第一話 陳腐な小説

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 「陳腐な小説」の定義ってなんだろう。  俺は、世間の小説やドラマの批評を見るのが割と好きなのだが、「陳腐」と評されるのを見るたび「陳腐」とは何かと考えていた。もちろんぼんやりとはわかるんだけど。  あいつの小説を初めて読んだとき、その答えを見た気がした。あいつの小説は、陳腐も陳腐、「The・陳腐小説」だと思った。  「あいつ」とは、俺のクラスメイトで友人の川上佑人の小説だった。あいつの小説ときたら、恋愛ものを書いたかと思えば「本屋さんで偶然同じ本を手に取った女の子に一目惚れ」から始まり、「翌日にその女の子が主人公の学校に転校してきた」かと思うと、「ひょんなことからその女の子と同居」し、「なんか嫌われてるんじゃないかと心配してたら両思い」みたいな、クソ凡庸な小説を生み出すのだ。何作か書いているけど毎度そんな感じなのだ。エピソードの陳腐さを補う文章力があるならまだしも文章はさらに稚拙で陳腐なのである。siriでももう少しましな物語を作れるんじゃないかと思う。
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