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第三話 三題噺
俺の小説ノートは清々しいしいほど白いままだった。まだ次の季刊誌の締め切りまで時間はあるとはいえ、どうしてこうもなにも浮かばないんだろう。たしかに、陳腐でもスラスラ小説を書いている川上の方が、物書きとして出来がいい気がする。
俺は、静かな部室で吹奏楽のバラけた演奏をぼんやり聞いていた。
「東村くん。とりあえずなんか書きなって。川上へのラブレターでもいいから」
緑子が言う。文芸部の部活にきっちり顔を出すのは部長の緑子と俺ぐらいで、今も部室は二人だ。あとは幽霊部員。
「なに言ってんの。そんなん書けるか」
「東村くんは、またそうやって……まあいいや。しょうがないな。こうなったら『三題噺』でいこう」
「ああ、三つの言葉から話を連想するやつ?」
「そうそう。さすが東村くん。こういう変なことはちゃんと知ってるわね。ネットでいいサイト見つけたの。『三題噺メーカー』って言って、三題噺のお題を自動生成してくれるやつ」
緑子はスマホを取り出し、その「三題噺メーカー」の画面を見せた。
「ここに、自分の名前を入力すると、お題が出るから」
画面には、「診断したい名前を入れてください」と言う欄があり、その横に「診断する」ボタンがある。少し興味が湧いて、試しに一回やってみたくなった。
俺は自分の名前「東村康基」を入力して、「診断する」ボタンを押した。診断結果は……
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