3 スランプ

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「本当にごめん……」 「私こそすみません。先生に訊きもしないで勝手に」  温かく苦いコーヒーが体に染み渡る。このマグカップも、佐倉さんが私の誕生日にくれた物だ。やや子供っぽいウサギ柄だが、優しい色合いが佐倉さんらしい。  涙がこぼれそうになり顔をあげると、岩のりのように張り付いた髪を左手で撫でる須藤が、ふうと溜め息をついているのが目に入った。 「あまり言いたくはないけど、前回の先生の作品も、かなりの悪評だよ。このままだと今回も同じ結果だろうね」 「本当にすみません。でも、あと一話分、なんとか頑張るから」 「一話?」  佐倉さんと須藤が、同時に私の顔を覗き込んだ。 「先生、連載は最低でもあと半年は続くんでしたよね?」と佐倉さん。 「大丈夫。ギャグ漫画なんて、なんとでもなるから」 「そういうもんですかぁ。ある意味さすがです」 「ちょっと、私を無視して話を進めないで」青ざめた顔で、須藤が割り込む。 「先生、なんですかそれは。勝手に決めないでよ」
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