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「本当にごめん……」
「私こそすみません。先生に訊きもしないで勝手に」
温かく苦いコーヒーが体に染み渡る。このマグカップも、佐倉さんが私の誕生日にくれた物だ。やや子供っぽいウサギ柄だが、優しい色合いが佐倉さんらしい。
涙がこぼれそうになり顔をあげると、岩のりのように張り付いた髪を左手で撫でる須藤が、ふうと溜め息をついているのが目に入った。
「あまり言いたくはないけど、前回の先生の作品も、かなりの悪評だよ。このままだと今回も同じ結果だろうね」
「本当にすみません。でも、あと一話分、なんとか頑張るから」
「一話?」
佐倉さんと須藤が、同時に私の顔を覗き込んだ。
「先生、連載は最低でもあと半年は続くんでしたよね?」と佐倉さん。
「大丈夫。ギャグ漫画なんて、なんとでもなるから」
「そういうもんですかぁ。ある意味さすがです」
「ちょっと、私を無視して話を進めないで」青ざめた顔で、須藤が割り込む。
「先生、なんですかそれは。勝手に決めないでよ」
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