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佐倉さんの話だと、こうだった。
玲奈ちゃんは、私たちの関係を昨日まで知らなかった。ここに来る途中、偶然再会した共通の知り合いから、私と橘君の関係を聞いてしまった。
「私との関係って……」
「橘君は先生との密会を、周りの男友達に自慢げに話していたみたいですよ」
「そうなんだ……」
私はうなだれて頭をかかえた。
十四歳年下の橘君は、有名漫画家という私のステイタスに憧れ、その特別感と贅沢さを楽しんでいただけなのだろう。そこに恋愛感情がないのはわかっていた。
それなのに、裏切られた気持ちになるのはなぜ? 初めから、私たちには何もなかった。彼との未来なんて望んではいなかった。彼を咎めることなんてできない。
「橘君にとっては、玲奈ちゃんはただのきれいな先輩でしかなかったけれど、玲奈ちゃんにとっては違ったみたいですね」
佐倉さんは静かな口調で言った。
馬鹿なことをして玲奈ちゃんを傷つけた。そして失った。その代償はとてつもなく大きい。
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