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「ここのミドリの台詞。ちょっと、いくらなんでも異常だよね。これじゃホラーだよ」
須藤の言葉が、頭に入ってこない。
情けない。そんな思いで、マグカップの中で揺らぐコーヒーを、ただじっと見つめた。
「先生、顔色悪いですよ。今日はゆっくり休んでくださいね。これ、カフェインレスですから」
佐倉さんが心配そうに言った。
「カフェインレス?」
「先生、眠れてないですよね」
「だめだよっ! こんな状態で寝てどうすんの?」
思わず、声を荒げてしまった。佐倉さんが、「すみません」と慌ててマグカップを下げようとした。そこで、はっとなった。
「ご、ごめんっ。ごめん、サクちゃん」
私は佐倉さんの手から、カップを奪うように取った。
「ついイライラして、ごめん。こういうの嬉しい。ありがとう」
慌てて取り繕ったが、遅い。佐倉さんの目には、涙が浮かんでいた。気を遣ってくれた佐倉さんに、なんてひどいことを言ってしまったんだろう。
最低だ。
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