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1 家族の記録
身長149センチで細身の私は、そのミニマムさから可愛いなんて言われたりするけど、当の本人はたいてい面倒なだけだ。何と言っても、あのママの娘なのだ。身長170センチでグラマーなママと外見はまったく違うけれど、性格の半分がママ譲りなのは否定できない。
ママこと坂下葉子を言い表すのに、一番しっくりくる言葉、それは「ファンキー」だ。派手で明るくノリがよく、熟考などせず、ただひたすらに行動的なのだ。
家ではいつも大音量で陽気な音楽をかけ、仕事で疲れて帰ってきたパパと、嫌がる私を巻き込み、踊り歌った。週末には、様々なパーティーを企画し、たくさんの人を招いて深夜まで騒ぎ、パパのいない昼間にも、学生時代の友達や近所の人たちを家に集めては散財した。
ママは私を十七歳で産んだ。だから周りの母親よりずっと若く元気だった。さらに好奇心旺盛なため、毎日のように幼い私を連れ出し、様々な場所に出かけた。
それは動物園に始まり、美術館や遊園地、見知らぬ新人ミュージシャンのコンサートや前衛的なアートイベント、果てはボクシング観戦に至るまで。激しく動き続けるママについていけず、私が高熱を出して寝込んでしまうこともしばしば。
私が小学校にあがってしばらくした頃には、ママは突然、「美容師になる」とパパに宣言。十代の子たちでごった返す美容専門学校に、当時二十四歳のママは平然と通い、ほどなく美容師免許を取得。すぐさま美容師として働き始めた。
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