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そんなママに対して、パパは穏やかな人格者だ。
ママがどんなに浪費しても、「また買ったのか。しょうがないな。頑張って働くか」と寛容に微笑み、ママが家に友達を招いて、どんちゃん騒ぎをしても、「ご近所さんに怒られるから、もう少し静かにね」と笑顔で注意するだけなのだ。
その悟りを開いたようなパパと、ママが出会ったのは、ディスコだったそうだ。
資産家の家に生まれたパパは、当時二十八歳。私の祖父、つまりパパの父親が経営するアパレル会社で営業マンとして働き、いずれは経営陣に加わるべく、厳しい修行のような日々を送っていたそうだ。
その日、パパは仕事のストレス発散に、ディスコへと繰り出した。そこにいたのが、当時女子高生だったママ。二十歳の大学生だと偽って遊んでいた。
陽気でセクシーなママに、パパは一目惚れ。慣れないナンパをして、あっという間に二人は意気投合。恋に落ちた。二人は交際を続け、三ヶ月後、パパはママに結婚を申し込んだ。そこでママは初めて、パパの子を妊娠していること、そして自分が十六歳の高校生だと白状したという。
当然のように周囲から結婚を反対されたパパは、その人たちを、ひとりひとり説得して回った。しかし高校生のママを、嫁として受け入れる親族はいなかった。ただ一人、パパの祖父、つまり私の曽祖父である赤城喜介を除いて。
「その娘をここに連れてこい」
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