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喜介にそう言われ、パパは慌ててママを喜介の前に連れて行った。喜介はママを睨むようにしばらくじっと見つめていたが、ふと大きく笑った。そして、
「これは、たいした嫁を見つけたもんだ」
と言った。
それは、二人の結婚を認めてくれた瞬間だった。喜介は赤城グループを一代で築き上げた人物である。喜介が良しと言ったことに、反対できる者などいなかった。
そうして二人は、めでたく結婚し、私が生まれた。
天真爛漫な若いママと、かわいい一人娘のため、御坊ちゃまだったパパは必死に働いた。そして数年後、その努力を認められたパパは、曽祖父の喜介から小さなアパレル会社を譲り受け、慣れない経営を任された。私が小学生になった頃には、会社は軌道に乗り、さらに成長を続けた。
どんな人に対しても驕ることなく、スマートで穏やかなパパ。仕事ができ、優しいパパは、私の自慢だった。
つまり、ママに多少の問題があったとはいえ、私たち家族は幸せだったのだ。忘れもしない、あのクリスマスイブまでは……。
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