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ママに視線を向けられ、不穏な空気を察知した私は、明日は友達の家でクリスマス会だとすばやく答えた。
「ここでパーティーやるなんて、俺は聞いてないぞ。クリスマスパーティーでもやるのか」
「クリスマスパーティーじゃなくて、ミーコの結婚パーティー」
ミーコとはママの幼馴染で、ニューハーフの美容師だ。本名は光男。
「ミーコ? ミーコが結婚できる訳ないだろう」
「法律上はできないけど、結婚パーティーをやるのは自由でしょ。見て見て、これ作ったの。ホームパーティー的にやりたいって言うから、飾り付けも手作りしちゃおうかと思って」
ママは目の前にあった、金色に光る造形物を持ち上げた。大きな金の玉がさくらんぼのように二つ、紐で括られた奇妙なオブジェ。それは部屋の明かりに照らされ、キラキラと反射した。
「いいでしょ、これ。くす玉になってるの」
実際、ママは昨日から、様々な物を必死で作り続けていた。熱中すると、他のことが見えなくなる、ママの特徴のひとつだ。よくあることだった。
とにかく、これで終わりだ。ママにこんな風に笑顔で言われたら、さすがのパパも絶対に折れる。ママのおバカな無邪気さに、いつものように、つい吹き出してしまう。笑顔に戻る。私はそう思った。
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