真っ黒な手紙

2/8
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
カッカッと鳴り響くチョークの音、楓は安心したかのような趣でボーッと黒板を眺めていた。 黒板の前に立っていた女教師が振り向くと、端に座るズボラな格好をし、物思いにうけていた楓と目が合い。 「では、この問題を 椎名 楓さん、やったね高校最後の数学の授業で当てられるなんて!進学先が決まったからって気を抜いていてはいけないわよ」 「そんな殺生な!」 楓は情けない声を上げながら許しを漕ぐように手を頭の上で合わせる。教室の中は笑い声でいっぱいになった。先生は呆れたような溜息を吐くと、 「では、周くんー」 先生がそう呼ぶと女子生徒がいきなり声を揃え黄色い声を上げだした。 楓の背後にいた男子生徒が声を上げる。 「先生〜。周って苗字二人いるんだけどどっちですか〜?」 「あ、ごめんね カイトくんの方で」 そう言われると一番後ろの席の窓付近に座っていた男子生徒が気だるげに立ち上がった。 「=2(x^2+y^2)」 彼は淡々と答え終わると先生の合図を聞く前に席に座った。隣のクリーム色の髪をした男子生徒、ナイトと呼ばれる人物がカイトと呼ばれた男を見て「やったね」と言って微笑む。 このクラスには学校のアイドル的存在が二人いる双子のナイトとカイトだ。容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群、まさに完璧人間。 ひとりの女子生徒がこう口走る。 「花の高校生活もあと一週間で終わり、あの二人を拝めることもできなくなるんだわ」 楓は「確かに」と、心の中で言った。別に至ってファンと言うわけではないが、美形を見られなくなるのは少し残念な気がしたのだ。 授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り、 楓は教科書などで散らばった机の上を片付ける。 今日は午前中で授業は終わり、明日で本格的全科目の授業が終了となる。 楓は、ホームルームが終わり、鞄に筆箱や机の中に溜まっていた教科書を鞄に詰めた。 大分の生徒が少なくなってきた教室を見渡し楓は教室を出た。学校の門を出るとすぐに横断信号機があり丁度信号機は青になっていた。 「ラッキー♪」 楓は信号機が変わらないうちに走り抜けようと小走りする。横断歩道の真ん中には年老いた80歳くらいだろうかお爺さんが立っておりジッと信号機を見つめていた。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!