10人が本棚に入れています
本棚に追加
(あのお爺さん 何やってんだろ?そろそろ信号変わっちゃうよ)
楓が横を通り過ぎ、渡りきってもそのお爺さんはその場から動くことはなく、未だ信号機を見つめていた。
「あぁ 信号が点滅してるじゃん」
楓は迷いなくお爺さんの元へと駆け寄り声をかけようとした時、車のクラクションが鳴った。車がお爺さんの邪魔だと言うかのようにクラクションを鳴らしていた。
信号を見ればもう、赤になっていた。
「お爺さん一回渡り切りましょう」
楓は慌ててお爺さんの手を取ると横断歩道を渡りきり道の端にお爺さんを寄せた。
「いきなりごめんなさい、大丈夫でした?」
と聞くとお爺さんはじっと不思議なモノを見つめるかのような目で楓を見つめていた。
楓はその視線にたじろぎはい?と首を傾げる、するとお爺さんは薄く微笑んだ。
「ありがとう お陰で助かったよ」
楓は、その言葉にニッと微笑んだ。
「お爺さん帰れる?」
最後まで手助けをしよう、もしかしたら迷子になってしまったのかもしれない、楓はそう問いかけるとお爺さんは
「大丈夫だよ、お嬢さん 親切だね」
いやこんな事当然ですよーと楓は頭をかいて照れ隠しをする。
「じゃあ気をつけて帰ってねー」
楓はそそくさとその場を後にしようとするとお爺さんの手によって楓は呼び止められた。
楓は怪訝そうにお爺さん見つめる。するとお爺さんは掴んだ楓の手を口元に持っていき手の甲にキスをおとし、
「お嬢さんはいい匂いがするね」
とニヤリと微笑んだ。いきなりの意味不明な発言に楓は訳もわからず背筋をゾッとさせ、サッと自分の手を取り上げた。
「あはは 柔軟剤かな?私もこの匂い好きなんです」
楓は口早にそう誤魔化し、その場から一刻も早く去ろうと小走りで去っる。
その間も、ずっとお爺さんに見られているような気がして楓は、後ろを振り向く勇気はなかった。
最初のコメントを投稿しよう!