真っ黒な手紙

4/8
前へ
/24ページ
次へ
家の近くに来て、あたりをキョロキョロと見渡せばあのお爺さんが近くにいる様子はなく、楓は一息つき、慣れた手つきでアパートのポストを見た。 今日は父への請求書も何も入っておらず、楓はポストを閉めると階段を上っていき、アパートの鍵を開けて部屋に入った。 「はぁー さっきの爺さんマジヤバイ。いきなりいい匂いってセクハラかよ。」 楓は玄関でそう吐き捨てるように言うと靴を脱ぎ、ベランダに干してある洗濯物をしまい込んだ。 この家では、父と二人暮らしをしていて、父はとんでもない遊び人、毎日朝から晩まで女遊びやパチンコ店などで遊び呆けていてろくに帰ってこない野郎だ。 幸いにも学生のうちは、保護を受けていて、楓自身バイトもしていたため、貧乏だが食べてはいけた。 「はぁー、疲れたわー。」 と言っても楓はすぐに暇になり、一人で過ごすには色々な事がありすぎて居ても立っても居られず、楓は隣の部屋に住む幼馴染の元へと向かった。 最近その幼馴染に彼女が出来てからあんまり行かないようにしていたが、今日はお爺さんの事もあり、楓の心は荒れていた。いろんな愚痴を聞いて欲しかったりする。 「癒しだ!私には癒しが足りない!」 そう言いながら幼馴染の玄関の前に立ちベルを鳴らす、すると秒で嫌そうな顔をした幼馴染がドアの隙間から顔をのぞかせた。 「声うるせぇ ここには癒しはない。帰れ」 「暇 家入れて」 「は?やだよ」 そんな会話が続き、後ろから可愛らしい女の子の声が聞こえてきた。 楓は、ハハーンと声を出すと、幼馴染の顔が強張った。 「ほっほぉ〜、これはこれは彼女と宅デートですか?」 「いや その」 「こんにちは~ 智也くんの幼馴染の楓でーす!」 楓は玄関のドアを無理矢理こじ開け、自己紹介とともに玄関へと侵入する。 「きゃ、え?」 幼馴染の智也を押しのけた先には、ふわふわの茶髪の髪のショートヘアーの美少女が目の前に立っていた。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加