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「わ わかん、ない、私、何も、して、な、い、」
楓は切れる言葉をやっとのことで繋げて答えた。
「はぁ? 何もしてないのにこんな『血汁を飲み干したい』的な事言われるのかよ。オェ 口にするだけで吐き気がして来そうだな、てか血汁ってなんだよ気色わりー」
智也は本当に気持ち悪そうに舌を出し、顔を歪めている。
「お願い、本当に、朝からおかしいの 朝起きたらコウモリが家の中で飛んでたり」
「それに、今日は何かと視線を感じるのずっと見られてるような」
楓の怯え込みに何かを察したように、智也は仕方がないと言った表情をしながら楓の頭をそっと撫でた
「んで? その視線ってのは今も感じるのか?」
そう智也が問い掛けると楓は首を振りギュッとまた、抱きつく腕に力を込めた。
「はぁー 取り敢えず今日は俺の家に来いって言っても隣だけど 一人でいるよりはマシだろ?」
そう言ってしがみつく楓をそのままに、智也は玄関の鍵を閉めた。
「本当にごめん 私頼れるのがあんたしかいなくて」
少し落ち着いて来たところで楓は冷静さを取り戻すと体を智也から離し、申し訳なさそうに眉をハの字にさせた。
「今更謝れたって、こんなもん慣れっこだよ。
それよりもう警察に連絡したか?」
「まだ」
楓は幼馴染である智也の優しさを噛み締めていた、いつもは喧嘩ばかりの二人だが、いざという時には互いに助け合う兄妹的存在だ。
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