カクカク

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世の中は、書籍化作家だらけになった。 ネットで小説を書いてる者で、まだ書籍化していない者を探す方が難しい状態だ。 書籍化された小説の売り上げも上々で、出版業界はいまだかつてない賑わいを見せていた。 だけど、老舗出版社『月の石社』だけは、頑なに大量の入賞者を出さないスタンスを貫き通していた。 書籍化する最優秀賞は、常に1作品だけだ。 時には該当者なしということさえある。 そこで、入賞することが、僕の目標となった。 僕はカクカクを駆使し、今までで最高に面白いと思われる作品を投稿した。 しかし、最優秀賞に選ばれたのは、残念ながら僕ではなかった。 選ばれたのは、小石川りおんという作者の『青い空の下で』という作品だった。 僕のあの作品を上回ったとは、相当面白い作品に違いない。 僕は最優秀賞に選ばれたその作品を読んだ。 酷い…… 誤字・脱字はあるし、言葉の誤用もある。 さらに、ストーリーは盛り上がりに欠け、面白くもなんともない。 (なんでこんなものが…?) 『最優秀賞に選んでいただき本当に夢みたいです。 どうもありがとうございます。 この作品は僕の処女作です。 毎日原稿用紙に向かって書き上げました。』 (もしかして、この人…カクカクを使ってないのか?) 運営は『オリジナリティが半端ない!』と大絶賛していた。
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