第一章 後日談

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ

第一章 後日談

あの後亀井から、岡田が吹っ切れたようだ と言う話を聞いて 唯は胸が痛くなりながらも、ホッとしていた。 「良かったな。」 唯が言うと、亀井は複雑な表情で笑った。 「あいつ『医大に行け』って 親にプレッシャーかけられてた時に たまたま行きずりで出合った女の人と、ホテルに行ったんやて。」 「そうか。」 「あいつでもそんな事あるんやなって思って、 びっくりしたわ。 好きになると相手が完璧に見えてしまうけど、 あいつも一人の人間なんやなって。」 「そりゃそうや。神様ちゃうで。」 「せやな。」 と彼は続けた。 「でもそのショックで成績下がったから、 あいつの親も焦ったらしくて 逆に『第一志望に行きなさい』って後押しされたらしいわ。 留年だけは避けて欲しいってさ。現金なもんやで。」 結局第一志望の大学はA判定に戻ったらしい。 本人としては、いい風に転んだようだった。 「でもしばらくは 誰も好きになられへんって言ってたわ、あいつ。」 ボソッと呟く亀井が淋しそうで、 唯は慌てた。 「だったら友達として 一緒に居れる時間が増えるやんか。」 フォローになっているのか、いないのかは分からなかったが 亀井は微笑んで頷いた。 「ま、そういうことにしとく。 いつかチャンスも来るかもしれんしな。 聞いてくれてありがとう、先生。」 彼はそう言うと右手を差し出し、 唯と握手をして立ち去った。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!