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「じゃあ男とキスしたり、その先もできる?」
「す、好きな人とならしたいと思う……」
三田村の好きな人、という響きに、高鳴った玉城の胸は急に現実を突きつけられたようで、ちくんと傷んだ。
「経験がないと、わかんないだろ?」
イチかバチかで返してみる。経験がないだなんて決めつけて、否定されたらきっと傷つくのは自分なのに。、
「それはそうだけど! でもドキドキする気持ちとか、そういうのはわかる……気がする」
「じゃ三田村は……ゲイビとか見る?」
本当は『三田村は好きな人いるの?』――という質問のはずだったが、声に出すと別の質問になっていた。それを聞く勇気は自分にはない。
「そ、それは見ないよ!」
ボーイズラブが好きでもゲイビは違う。そのあたりも自分と同じようだ。
「ボーイズラブ描いてる漫画家はゲイビ見てるかもしれないぞ、まきじゅんとか」
まぁ、見れませんけど。
「やめて! まきじゅん先生は絶対にそういうのは見ません!」
おまえ、どれだけまきじゅんを聖人君子だと思ってんだよと言いそうになる。なんなら、昨日はAVのサンプルサイトで一人でしたというのに。
「そういえば……」
「どうしたの?」
「いや……なんでもない」
そういえばお気に入りのAVに出てくる美少女が三田村に似ていたことを思い出し、勝手に自己嫌悪に陥る。しかもちょっとだが下半身が反応してしまった。思い出したのがAVだからなのか、三田村だからなのか。
「じゃその、まきじゅん先生に三田村の裸の写真とか送ってやればいいんじゃないか」
「ええっ、それって参考にしてください、みたいな感じで?」
「姉ちゃんも確か、男のポーズ集みたいな写真集とか持ってたぞ」
「姉ちゃん?」
「あ、いや姉も漫画家目指してたことがあってな」
ナチュラルに姉の話をしてしまい、必死でごまかす。滑るように姉の話をしてしまうのは気をつけなければ。
「でも、もし僕の体の写真を送って、先生の参考になるなら嬉しい」
「は……?」
予想外だった三田村の前向きな発言に絶句する。そこは否定してもいいところなのではないだろうか。
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