SS①:ドキドキなボーイズラブ展開!?

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『ブーーーブーーー』  低く響く音は、三田村のポケットの中にある携帯のバイブ音だとすぐわかった。二人の雰囲気は一気に現実へと引き戻される。  ごめん、と申し訳なさそうにスマホを取り出す三田村に、うん、と頷いてみせる。 ――危なかった……。  冷静になって考えると、数秒前の自分は三田村を押し倒そうとしていた。勢いというのは怖いものだ。よくよく考えてみれば、付き合ったその日に襲うとか、なんというケダモノだ。  たとえ三田村が許したとしても、自分が一生後悔しそうな気がする。 「うん、ごめんね。じゃあ先に食べてて」  話しぶりから察するに、どうやら家族からの電話らしい。以前も家で食事を一緒にするから、と帰っていたのが記憶に新しい。妹と姉がいると聞いたことがあるが、きっと、三田村同様、天使のような人たちに違いない。 「じゃあね、ばいばい」  通話を終えた三田村は申し訳なさそうに、玉城の顔を見た。 「おうちの人だろ。心配かけちゃいけないよな」 「ごめん……早いうちに遅くなるって言っておけばよかった」 「いつでも来ればいい。俺、姉ちゃんの原稿手伝ってないときは暇してるし」  別に毎日来てくれても……いや、それは自分の理性が持たない。かもしれない。  鞄を持ち、玄関まで三田村を送りながら、自分は鍵を掴み、制服の上から厚手のパーカーを羽織った。 「玉城くん、出かけるの?」 「ああ、駅まで送ろうかと思って」 「え、でも寒いよ?」 「あー、その……少しでも、長く居たいから」  玄関の薄暗い明かりの下でも、三田村の頬がほんのり赤くなっているのを確認できた。ああ、ほんと、そのへんの女子よりも数億倍かわいい。けれどそんな風に照れられてしまうと、見ているこっちまで恥ずかしくなる。 「い、行くぞ」 「うん……」  二人並んでマンションを出る。エレベーターも、マンションのエントランスを抜けるときも二人は無言だった。本音を言えば、帰したくない。けれど、このまま三田村と一緒にいたら、本能で襲ってしまうかもしれない。  男を押し倒してその後、何をどうするか、何も知らないくせに。
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