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天使を眺めるだけで幸せな日々
それは、ちょうど休み時間のことだった。
「ねぇねぇ、淳くん」
眠っている淳をクラスメイトの涼平がゆさゆさと揺った。
「ううーん。なんだよ、うるせえな。俺、寝不足なんだよ」
「授業始まっちゃうよぉ。じゃあ、淳くんの目が覚めるように、僕がキスしてあげようか」
「えっ、今、なんて……?」
突然の申し出に、淳は慌てて顔上げる。
「僕が淳くんにおはようのキスをしてあげる」
「お、おい、涼平。ちょっと待っ……」
近づいてくる涼平の顔に、淳の心臓が高鳴る。自分たちはただのクラスメイトで、しかも男同士だ。普通ならそんなことは許されない。頭でわかっていながらも、淳は涼平の唇を迎えるために目を閉じてしまう。涼平との初めてのキス――
「いや、やっぱりダメだ! 俺たち、まだそんな関係じゃ……」
「じゃあ、どんな関係なんだ」
めんどくさそうな低い声に尋ねられ、玉城潤也は目を開けて顔を上げた。
周囲を見渡すと、そこはいつもの教室のいつもの自分の席で、当然、顔を近づけてくる『涼平』もいなければ『淳』もいなかった。
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