~序章~

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~序章~

ジュンコはその時 職場であるショーパブへ出勤直前だった。 ざわつく街角を一人ゆっくりと歩いていると 歓楽街にはふさわしくない影が見えた。 雑居ビルの一角にその少年を見かけた時、 見間違いかと思い、反射的に目をこする。 身長は145センチ程度 色が抜けるように白く、日本人形のような上品な顔立ち。 “アキラだ!” 彼は確かに、アキラに似ていた。 だが、最後に彼を見たのはジュンコがまだ 男のなりをしていた頃で、 30年も前のことだ。 アキラの事は、今でも時々夢に見る。 彼が無事に成長していたら、 今頃は40過ぎのオヤジだろう。 あの時のままでいるわけが無いのだ。 他人の空似に決まっている。 “彼がまだあの姿でいるなんて。化け物じゃあるまいし。” くだらない事を考えていた自分がおかしくて、 彼女はくすりと笑った。 黄昏に染まる町並みを見ながら、 ジュンコはあの頃を思い出す。 苦い、そして切ない思い出が蘇り 古傷がえぐられるような痛みも蘇った。 50手前の今となっては 脂肪の塊の巨漢だが、 あの頃のジュンコは筋肉質な細身の体型で 日雇いの工事労働者として 毎日肉体労働で汗を流していた。 その時に知り合った謎めいた男の紹介で アキラと出会ったのだ。     
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