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あ、そういえば、学校のことを話していませんでしたね。僕らの学校は少し特殊でして、僕らの社会がそうであるように、学校もまたアクターやアクトレスを育成するための場所となっているんです。みなさんの世界では、普通科という一般教養を習うところがあるでしょう。我々の学校にも少しその役割が存在するのですが、それは15歳までには終わり、16歳からは男はアクター、女はアクトレスになるために演劇に特化した教養を積むことになるんです。僕は当時ちょうど16歳で、この豪雨降り続ける日には、演劇一筋に心を決めていました。
ちなみになのですが、僕らどもの性別とやらは、そもそも見た目も仮の姿なのですから、とても流動的なんです。そして生涯付きまとう性別がある程度決まってしまうのが、この16という歳でもあるんです。そう、もう察しの良い方はお気づきかもしれませんが、16が僕らの世界での一人前の大人になる歳なんです。
しかしむろん例外もあります。先ほど僕がなぜ、生涯付きまとう性別が「ある程度」決まってしまうと申したかと言いますと、それは本当にそうだからなのです。
僕らの世界では16を超えても性別が定まらない、半端者がいるんです。半端者と言いますと悪い者のように聞こえますでしょうが、それは僕が勝手にそう呼んでいるだけで、世間ではむしろ英雄的なのです、そういう人たちは。今の僕はもう半端者とは呼びません。エリートと呼んで、自分の分をわきまえております。でも当時の僕は違いました。彼らはうざったい、目の上のコブみたいなもので、世間でちやほやされるのをやっかんで、そう呼んでいたのです。
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