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さてさて、ようやくずぶ濡れの服を一通り絞り終わった僕は、靴箱で上履きから下履に履き替えていました。雨の日は人がまばらなのがセオリーなんですが、今日はやけに人が多い。それもみな靴を履き替えるために居るのではないみたいなんです。何事だ?と僕が頭の中で名推理を繰り広げようとない脳みそを酷使していると、次第に騒ぎが起こり始めたのです。どんどん大きくなっていく群衆の声は、さながらエコーチェンバーのようでした。
騒ぎが最高潮になった時に校門の方から一塊の一団がやって来たのです。ああ、それはちょうど人類史の先生が授業中に憧れを抱きながら語っていた、あの古代に流行った重装歩兵の密集陣形さながらでしたね。何かが徒党を組んでやってくるみたいでしたよ。少し目を凝らしてみると、密集陣形はどうやら中心の何者かを軸として広がっていたのです。
これは・・あれだな。
僕はもう確信していました。これはよくあることだと。
それにしてもよくこんなに雨の酷い日に、全く人の集まるものだと。傘が喧嘩しあってるじゃないか。それに傘も刺さずに靴箱から飛び出してくやつもいるじゃないか。まるで英雄の凱旋だな。まあ本当に英雄みたいなものなんだけども。
そう考えていると、一団はもう靴箱近くまで到着していて、そうなると靴箱にいる者たちなどももう男女関係なく、舞い上がって奇声を上げている始末なんです。
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