0人が本棚に入れています
本棚に追加
空を飛ぶ
死んだら何もかもお終い。何もかもなくなる。
だとすると、この先何かを頑張ったところで何を残せるのだろうか?
きっと私じゃ何も残せない。今死のうが後に死のうが結果は変わらないだろう。
そう思うと何もかもが馬鹿らしくなって、何もかもが無意味に思えてくる。
私は何をしたかったのか?
何かを残したかったのか?誰かの為になりたかったのか?
今となってはそんな事全部どうでもいいけど。
無機質に日々を繰り返すたびに死への憧れはどんどん増していく。
気づくと私は見晴らしのいい場所に立っていた。
眼下には生きている街が広がっている。
一歩踏み出せば空へ飛べる。
きっとこれがドラマやアニメなら踏み出しかけたところで誰かが救いの手を差し伸べてくれるのだろうけど、
実際はそんなことはなく、煽るかのように微かに風が吹くだけだった。
そんな事期待していたつもりではないけど、心の何処かではそうであってほしいと思っていたのだろう。
完全に死にきっていない心にどこか、ほっとしたような気がした。もしかしたら呆れだったかもしれないけど。
どっちでもいいけど、そんな事、本当に。
何も考えてはいなかった。
ここに来たことも、今から飛ぶことも。
ただ、なんとなくそうしたい気分だった。
何も残せない。
何も変わらない。
この先きっとずっと同じ事。
だから今消えてしまってもいいじゃないか。
「さようなら」
そう小さく呟いて、一歩、
強く、飛ぶように踏み出した。
最初のコメントを投稿しよう!