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北国のわずかな陽の間。
その暖かさに耐えられず雪は静かに雫になり、陽に輝いて消えていく。
彼女のようだ、となんとなく思った。
A(「あのね、手に持つと消えて見えないの。やってみて、初めて知ったんだけど」)
ぼんやりしていた頭の中に、わずかに聞こえた彼女の声にびくっとする。
A(「お供えって、意味があるのよ!」)
それを最後に、彼女の気配は消えていった。
B「あの菓子、お供え扱いなのか……」
立ち止まって呟いて、それから道を引き返した。
そしてさっきと同じ店に立ち寄ると、同じお菓子をふたつ買う。
ひとつは、彼女と出会った街角に。もうひとつは、家の仏壇に。
昔からある、ただなんとなく繰り返されているルール。そこには意味があるんだと知った。
いつか、この不思議な力にも意味を見つけるんだろうか。
B「じゃあね」
何もないそこに声をかけると、街のたくさんの雫がきらきらと光っていた。
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