ルール

3/3
前へ
/3ページ
次へ
北国のわずかな陽の間。 その暖かさに耐えられず雪は静かに雫になり、陽に輝いて消えていく。 彼女のようだ、となんとなく思った。 A(「あのね、手に持つと消えて見えないの。やってみて、初めて知ったんだけど」) ぼんやりしていた頭の中に、わずかに聞こえた彼女の声にびくっとする。 A(「お供えって、意味があるのよ!」) それを最後に、彼女の気配は消えていった。 B「あの菓子、お供え扱いなのか……」 立ち止まって呟いて、それから道を引き返した。 そしてさっきと同じ店に立ち寄ると、同じお菓子をふたつ買う。 ひとつは、彼女と出会った街角に。もうひとつは、家の仏壇に。 昔からある、ただなんとなく繰り返されているルール。そこには意味があるんだと知った。 いつか、この不思議な力にも意味を見つけるんだろうか。 B「じゃあね」 何もないそこに声をかけると、街のたくさんの雫がきらきらと光っていた。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加