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私には秋が来ない。
「食欲」「読書」「スポーツ」
たくさんあるけど、どれも知ってる。
私は季節の中で「秋」が一番好き。
散歩をして、ふと見上げると青い木の葉からこぼれ日が見えるの。
あまり珍しい光景じゃない
いつものソレ。
でも秋だけは特別なの。
いつもはあまり気にも止めなかった葉が真っ赤に染まって綺麗に見えた。
私がいま立っている場所もそう。
楓の葉が風に揺れて時折落ちてくるの。
冷たい風とまだ色鮮やかなものも
木枯らし風が集めてる。
それでも私には秋が来ないの。
後ろから彼がそっと、布を巻いてくれたみたい。
温かくて嬉しいけど、彼は秋の訪れを知ってるみたい。
「ねぇ、何で私には秋が来ないの?」
彼は少しのあいだ黙ってこういった。
「君にもいつか来るよ」
腑に落ちない返事。
「少し冷えて来たし帰ろうか」
私は少しだけ頷いた。
私はあなたと同じ景色が見たい。
「次は絶対私も一緒に見に行くね?」
返事はなかった。
私はまだ迷っているのかも知れない。
「私は秋が一番大好き!」
そう言って泣きながら強がってみせた。
私は秋が一番嫌いだ。
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