楽しめなくなったプレイヤー

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 半年前。お互いに住んでる所が近いという理由で会合し、それ以来よくこの店で会って話をするようになったのだ。  私のお気に入りのこの店を彼女はいたく気に入ってくれた様子で、どうやら私が通っている以上に出入りしているらしく、すっかり常連として店員に認識されていた。  ちなみに、リンという名前はネット上で使うハンドルネームであって、彼女の本当の名前ではない。  何度も会うようになってからも、未だに私は彼女の本名を知らないし私の本名を教えてもいない。  今のところ、本名を知る必要はないと私は思っているし、彼女も聞いてこない様子からして私と同じ考え方なのだろう。 「でも、どうしてなんだろう」  私が珈琲に口をつけると、リンはおもむろにそう言葉を漏らした。結局手は伸ばすだけで、彼女は紅茶を飲む素振りはなく、顔色もうっすらと曇りがちのままだ。  リンの様子に苦い気持ちが胸にこみ上げてくる。珈琲の苦味も相俟っているようで、私は口に含んだ珈琲を味わうことを諦めて喉に押し込んだ。  そして軽く居住まいを正して彼女へと顔を向けた。 「日記にもあっただろう。“TRPGは辞める”と」  リンが話す、カイという人物。  彼は長らくTRPGというゲームを遊んできた人間で、またそのゲームのシナリオを手掛けている人物だ。     
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