1177人が本棚に入れています
本棚に追加
「遊佐さんにも申し訳ありません…貴方の大切な堀越君をお預かりしているのに」
丁寧にマスターに頭を下げられて、遊佐は少し苦笑した。
「接客業だし、アルコールを出す店だ、このぐらいは仕方ないと思っている」
本音はともかくとして、だ。
「桔平がやりたいと望むなら、私は見守るしかない……このカクテルの意味を信じて、な」
遊佐は、桔平にグラスを少し掲げて、微笑む。
XYZというカクテルの意味。
それは「永遠に貴方のもの」だ。
桔平は、遊佐の言葉に少し赤面した。
これだけは、カクテルの勉強をしているときに、物凄く印象に残ったので真っ先に覚えていたのだ。
いつか、遊佐に作りたい。
そう思って。
まさか、こんなに早く、しかもこんな場面で作ることになるとは思わなかったけれども。
「それにしても、あの男…どこかで見た気がするな」
遊佐は、低くそう呟いて、何か考え込んでしまった。
そのうちに、常連客がチラホラと現れて、バーの中は賑やかになり始める。
桔平も接客に忙しく、遊佐が一瞬見せた難しい顔に気づくことはなかった。
最初のコメントを投稿しよう!