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「へえ…あの人、ミステリー作家さんなんだ」
有名人て、あんな軽い感じの見た目だから、俳優さんとかモデルさんなのかと思った。
バイトを終え、帰宅して。
ベッドの上でくつろぎながら、桔平に聞かれるがまま、遊佐が相楽の職業について話すと、彼の恋人は少し関心を持ったようだった。
首を傾げ、風呂上がりのふんわりといい香りの首筋を無防備に晒しながら、どんな話を書くのかな?読んでみようかな、なんて他の男の話をするのは反則だ。
「ダメだ、許さない」
「え?あっ…ちょっ……遊佐さんっ」
その首筋に唇を寄せて、噛みつくようにキスをする。
きつく吸い上げて、痕を残して。
「そこ、痕つけたら、ダメ…って」
真冬ならいくらでも隠しようがあるけれども、今は薄着の季節だ。
首筋に痕なんてつけてたら、大学で友人たちに何を言われるか。
桔平の儚い抵抗は、あっという間に遊佐の手管の前に封じ込められてしまう。
「桔平」
その甘い低音が、耳許でいとおしげに名前を呼ぶ。
それだけで、桔平の全身はそのひとに与えられる快楽の予感に震えるのだ。
首だけでなく、背筋から胸元から、二の腕、太腿の内側、あらゆるところに赤い痕を散らされて。
「君が他の男にほんの少し興味を持つことぐらいで、こんなふうにヤキモチを妬くなんて、幻滅するか?」
身体の奥深く、他の誰にも許さない場所に遊佐の熱を受け入れて、身体中に痺れるような快感を巡らせながら、桔平は首を横に振る。
「遊佐さんでも、ヤキモチなんて、妬くんだ…」
二十歳も年上の、こんな何もかも完璧な男が。
少し焦れたような顔で、独占欲を露にして、彼を抱く。
痕をつけられるのは本当に困るけれど、それを嬉しいと思う自分がいるのも事実だ。
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