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崇史とは途中まで同じ路線だけれども、先に桔平が降りる。 じゃあまた明日な、と手を挙げて、桔平はホームに降りた。 地下鉄を乗り換えて、貧乏学生にはかなり不釣り合いな街を歩く。 遊佐は、桔平がそんなことを気にするなら、大学の側にもう少し手頃なマンションを買うかな?と、まるでノートか消しゴムかでも買うかのように軽く言ったが、さすがにそれは首が取れそうなほど激しく横に振って断った桔平だ。 遊佐の手頃がどの程度なのか全くわからないけれども、マンションを買うのに手頃も何もない。 しかも、あんな超セレブなマンションに住んでる遊佐を、桔平のちっぽけな居心地の悪さのためだけに、彼の言う「手頃」なマンションに引っ越させるわけにもいかない。 遊佐は、桔平と同居することを断念するはずもないから、当然一緒に引っ越すつもりなのだろうし。 ホント、なんであんな何もかも超越した雲の上のひとが、自分なんかを溺愛しているのだろう。 卑屈になっているとかではなく、純粋に不思議で仕方ない。 もうすっかり癖になった、遊佐のことを考えるときに無意識に触れてしまう胸元のリングを服の上からぎゅっと掴んで、桔平は思う。 彼が、遊佐のその溢れんばかりの愛情に返してあげられるのは、そのひとからの愛情にも負けないぐらい遊佐を好きだというこの気持ちと、そのひとを想うだけで熱くなるこの身体ぐらいだ。 だから、他の誰にも、ほんの欠片でもそれを渡すつもりはない。 そんなことを考えながら歩いていた桔平は、背後から忍び寄る人影に全く気づかなかったのだ。 桔平は、突然激しい衝撃を後頭部に受けて、視界が暗転した。
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