6.

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桔平は、ぼんやりと瞳を開けた。 頭がズキズキする。 あれ?俺……? 「ん…遊佐さん……?」 ベッドの上にいることで、家にいると思い込んだのかもしれない。 口から零れたのは、恋人の名前だ。 が。 寝乱れたようにしわくちゃのシーツに、どこか違和感を覚える。 遊佐はいつも、桔平を抱いた後、彼が寝苦しくないように新しいシーツでベッドを整えてくれている。 そのシーツも、いつもの柔軟剤の匂いではない。 身体を起こそうとして、ギクッとした。 脚の間に、ベタつくようなごわつくような、そんな違和感がある。 お尻から太腿のあたりだ。 事後、潤滑剤やら精液やらが乾いた後のような。 しかし遊佐は、よほどでない限り、桔平の身体をそんな状態で放置したりしない。 大抵は事後、シャワールームで丁寧に洗ってくれるし、桔平が起き上がれない状態だったり、意識を飛ばしてしまったりしたときは、蒸しタオルで全身を清めてくれているらしい。 彼をこの上なく溺愛しているそのひとは、本当に至れり尽くせりで、高貴なお姫様にかしづくように桔平を扱うのだ。 桔平は、恐る恐る身を起こした。 知らない部屋、知らないベッド。 床の上に放り投げられたように散らばっているのは、桔平が着ていた服だ。 彼は全裸だった。 遊佐に貰ったリングだけが、首から細いチェーンでそこに頼りなくぶら下がっている。 なんだ、これ……? 俺、なんで…ここ、どこだ? 震える身体をなんとか動かして、床に散らばった服をかき集めて身につける。 脚の間のごわつきが気持ち悪いけれど、そんなことに構っている場合じゃない。 服を身につけて、はっと、ベッドサイドのテーブルに、自分の腕時計が置いてあるのに気づいた。 それは、遊佐がプレゼントしてくれたものだ。 横のボタンを操作すると、遊佐に救難信号が届くようになっている、と、それをくれたとき、遊佐は言っていた。 救難信号を出すべきか、桔平は躊躇う。 遊佐以外のひとに、この身体を好きなようにされてしまったのかもしれない。 怖い。 遊佐がどんな顔でこんな自分を見るのか。
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