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「桔平君?」
何故、そんなに平然と、強姦した相手に対して接することができるのか。
廊下の壁際に追い詰められるような格好になって、桔平はイヤイヤするように首を横に振った。
「なんでそんなに怯えるのかな…頭を打ったところが大丈夫か確認するだけだから」
「さ、触るな…っ」
「今更だから。もう散々触っちゃったし」
君は気を失ってて覚えてないんだろう?
それなら、別にいいじゃないか。
なかったことにしておけば。
相楽は、心底戸惑ったようにそう言った。
彼の価値観では、意識を奪われた上での出来事は浮気にならない。
無理矢理されたことだし、その上記憶すらないのだから。
桔平は、しかし、相楽の言葉に、蒼白になって唇を震わせ、ボロボロと涙を零し始めた。
改めて、抱かれてしまったことを認識させられたのだ。
絶望的な気持ちになった。
遊佐を失いたくない。
だけど、遊佐にこんな汚れた身体では会えない。
あの何もかも完璧なひとに、他の人に汚された身体なんて相応しくない。
「あああ、もう、泣くなって…男だろ、別に孕む訳じゃないんだし」
確かに意識がないのにいろいろやっちゃったのは悪かったよ。
だけど、君があんまり色っぽいから、つい。
わしゃわしゃと自分の髪の毛を掻き回しながら、何やら言い訳のように言い募る相楽は、どうして桔平が泣くのか、本当にわからないようだ。
泣いている桔平を放っておくこともできず、かと言って近寄れば更に泣かれるという状況に、困り果てている。
そのとき、インターフォンが来客を知らせた。
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