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相楽は、原稿が書き上がった、と出版社に連絡を入れた。
堀越桔平の身体をまさぐり、その脚の間で達しただけで、こんなに書けるなんて。
実際に身体を繋げたら、どれほどのアイデアが沸いてくるのだろうか。
意識を失っていたから反応に乏しく、ほとんど自慰に近い行為だったのに、それだけでも十分堪能できるほどの、しなやかで匂い立つような色気の漂う身体。
欲しい。
あの身体も、一度ぐらいの過ちすら許せないらしい清廉な心も、全部手に入れたい。
自分の意思ではどうしようもないところで起こった出来事なのに、恋人に合わせる顔がないと泣く、そんなふうに一途に彼に思われてみたい。
どうやったら、あの手強そうなイケオジから奪い取ることができるだろう。
そんなことを考えていたら、編集が原稿を取りに来たらしい。
インターフォンが鳴る。
殴って拉致してくるなんてやり過ぎだったけれども、おかげであの身体に触れることができたのだから、少しは誉めてやらないと。
彼は、そう思って、ドアを開けたのだが。
いつもの編集ではない男が立っていた。
その男は表面上ペコペコとありがたがって原稿を受け取って行ったが、やたらに事務的だった。
担当編集だったはずの男はどうしたのか、と訊いたら、ストレスで身体を壊したらしく退職したのだ、と。
話の流れとしては、おかしくはない。
何しろ、犯罪になるようなことをしてまで、相楽に原稿を書かせようとしたのだ。
相当なストレスを感じていたはずだ。
しかし。
何か、じわりと嫌なものを感じて、相楽は首を軽く振った。
原稿が上がったばかりで神経過敏になっているのだろう。
少し寝たら、桔平のバーに飲みに行こう。
あの、会うと何故かホッとする居心地のいいひとに、会いたい。
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