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そんなこと、聞いていない。
確かに、着ているものから持ち物まで、何から何まで超一流のものを身につけていたし、ただ者ではないオーラを放っていたから、一体何者なのだろうとは思っていたけれども。
あのバーにいるときは、人間離れしているほどの美形であること以外は、そんな大層な相手だなんて思ってもみなかった。
政界でかなりの力を持っているはずの伯父が、対面してこんなにも緊張するほどの相手だとは。
伯父の隣で、相楽はひたすらに混乱していた。
桔平やマスターと他愛もない話をしているときの穏やかで少し道化っぽく装ってもいるようなイケオジは、今は何処にもいない。
恐ろしいまでの威厳を放って、凍りつくような冷酷な顔でそこにいた。
一介の美容整形外科医だと、マスターとの雑談の中で言っていなかったか?
なのに、何故、大物政治家をここまで萎縮させるのか。
その、一介の美容整形外科医が、口を開いた。
「私は政治に介入する気は全くないんですが、貴方の甥っ子が私のテリトリーをこれ以上乱すというのなら、さすがに許しがたい」
そして、手にしていた何枚かの書類をばさりと床の上に落とした。
床に散らばったその書類を目にした相楽は、ハッと息を呑んだ。
そこに印刷されていたのは、写真だった。
伯父が同じように写真を見て、サッと顔色を変えるのがわかった。
ほんのちょっとした好奇心だったのだ。
当時よく遊んでいた誰かに、SMバーに行ってみない?と誘われて、ついていったら。
被虐趣味があるというその少年と意気投合して、二人でその店を出て、一夜を明かした。
お酒を飲んでいたし、童顔なだけで成人していると思ったのだが、それは相楽が甘かった。
全てが終わった後で、その少年は、成人どころか、自分はまだ17歳だと言ったのだ。
どうしても、大人の男の人に虐めて欲しかったから、嘘ついてごめんなさい。
そう言って、お仕置きする?なんて期待してるような瞳で見つめられた。
被虐趣味があると言うだけあって、縛って欲しいだの、お尻をぶってだの言うから、年齢を知る前に、調子に乗って様々なことをしてしまった相楽だ。
そこにある写真も、いたぶられてるところを写真に撮られたい、と言われて撮ったものだ。
しかし、はたから見れば、それは未成年を逃げられないように縛り上げて強姦している写真だろう。
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