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遊佐は、あの事件の後も少しも変わらず、桔平を溺愛してくれている。
桔平の身体に余裕があるときは必ず、その甘い低音で睦言を囁きながら何度でも抱いたし、忙しくて疲れているときは、ただ柔らかく抱き締めて添い寝をしてくれた。
一緒に住んでいることが、こんなにも安心できるなんて。
桔平は、そう思う。
もしも、一緒に住んでいなかったら。
一人でいる時間には襲われる恐怖に怯えて、なかなか忘れることができなかっただろう。
遊佐がそこにいてくれる、ただそれだけで、その恐怖から解放されるのだ。
家族になる、というのは、こういうことなのかもしれない。
一人では背負えない重荷も、一緒に背負ってくれる、或いは背負うところを見守っていてくれる、それだけで、重荷が軽くなる気がするのだ。
遊佐に愛されて幸せだと思う。
そして、遊佐を愛することが幸せだ。
だから、お爺ちゃんになるまで、なってからもずっと、一緒にいられますように。
そう、願った。
fin.
2019.02.21
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